Shanling M6 Ultra レビュー:ナチュラルで明瞭なサウンドのオールラウンダー!大注目の最新DAP

 

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 M6 Ultraは、Shanlingの「M6(およびVer.21)」「M6 Pro(およびVer.21)」に続くシリーズの最新作となるDAPだ。

2022年9月16日に日本国内でも発売された。僕も先日入手し、一通り聴き込んだのでレビューとしてまとめようと思う。

僕はM6シリーズの「M6 Ver.21」を普段遣いのDAPにしており、今回の主な比較対象となっている。

使用機材やレビューの参考に鑑賞した曲の紹介を最後に「おまけ」として載せているが、極力いろいろな傾向の曲で聴いているものの音の好みもあり当レビューは個人の感想にとどまるので、気になった方はぜひ試聴して購入を検討してほしい。

 

使用感、仕様について

 

 まず、M6 Ultraのガジェットとしての使用感について述べていく。

 当機はSoCにsnapdragon665を搭載しており、メモリは4GBとなっている。動作は”非常に軽快”で、一通りのサブスクアプリ、音楽再生アプリ、およびYoutube公式アプリ・YouTube musicを使用したが全くストレスのないサクサク動作だった。M6 Ver.21でも前述のアプリは使用可能であるが、アプリによっては少しモッサリ感があったので、この進化は非常に嬉しい。

 この「なんでもできる」点は、Android搭載機の大きな強みだ。各種サブスク音楽サービスを始め、様々なスタイルで音楽を楽しめる。僕はDAPの使用では主にDL販売サイトのダウンロード音源をneutron music player で、サブスクはApple musicで聴いている。

ちなみに、M6シリーズはすべてAndroid OSのダウンコンバート処理対策の改造がされているため、OSによる音質劣化は心配する必要がない。

 Wi-Fiの通信に関して、速度・安定性がかなり向上していると感じたのも良かった。送受信アンテナ複数搭載の「MIMO技術」を採用しているらしい。YouTubeの動画も詰まったりすることはまったくなく、ストリーミング音楽のダウンロードも高速でストレスが少なくなった。

 Bluetooth5.0に対応し、LDAC接続も可能なためハイエンドBTイヤホンでの使用もでき、音質も良い。BT接続の安定性はM6 Ver.21と比較してあまり変化はなかった。だいたい5~8メートルくらいは使用可能であるが、人混みで使うとやはり途切れることはある。iphone12のBT接続では同室での電子レンジ使用でも乱れない強力な通信ができたが、そこまでの性能ではないようだ。

 ディスプレイはSHARP製のフルHD液晶で発色もよく、動画もギリギリ楽しめるくらいのサイズ感と解像度で、音楽アプリでMVを見るくらいならストレスなく可能だ。

 音量ネジと左側面の操作ボタンの使用感は非常によく、音量ネジは細かな音量操作がし易いちょうどいい固さだった。

 バッテリーはざっくり一日持参して外出しても切れる心配は無いくらいの容量はあるので問題ないと感じた。

 重さはM6 Ver.21と比較してやや重くなっており、サイズはあまり変わらないもののポケットに入れての使用などはギリきついかなくらいの重さがある(263g)。

 ゲインは3段階で設定でき、よほどのハイインピーダンスなヘッドホンでない限り十分に鳴らせる駆動力を持つ。ハイファイマンのedition XSは全く問題なく鳴らせた。

 上記のように、ガジェットとしてのビルドクオリティはM6 Ver.21と比較して飛躍的に向上している。まあ値段も倍くらいするのだが、音楽を聴く上での各種操作のストレスは限りなくフリーになっていると言っていいだろう。

 通常使用していて気になった点を上げると、まずは結構発熱すること。処理性能が上がったりDACチップを4枚積んでたりしているので仕方ないが、長時間手に持っての使用は控えたい程度の熱は出る。ただし、アプリの動作に不具合が出たり、シャットダウンしたことはないので個人的には許容範囲である。

また、M6シリーズはこれまで出力端子が3.5mmアンバランス&4.4mmおよび2.5mmバランス接続を採用していたが、M6 Ultraはこのうち2.5mmバランス接続がなくなっている。中華高級イヤホンなどは結構2.5mmバランスのケーブルのものがあったりするので、やや汎用性が下がってしまい残念である。

幸い、僕が使用しているバランスリケーブルはたまたま全部4.4mmだったので問題はないのだが、結構接続端子がデカく感じるので2.5mmで統一していた人はちょっと不便かもしれない。

 

サウンドについて

 

 さて、肝心の音質について掘り下げたいと思う。

 まず、全体的な感想としては「ナチュラルな出音にしつつ、ややウォーム系よりの明瞭なサウンド」であった。

DAPとしての音の引き出し方はあくまでも原音再現から大きくハズレないナチュラルな感じに止め、ボーカルが強調されたり、高音が突き抜けたりすることなく調和を保っている。そのため、僕が聴いた限りでは「このジャンルの曲が絶対得意!」とはならないもののどのジャンルでも満足行くレベルの表現ができるオールラウンダー的な面を持っていると思った。ロックやポップスが好きな人向けでボーカル(中音域)特化のDAPもあるが、M6 Ultraは中音域が埋もれることのない解像度があるためボーカルはクリアにかつ前に出すぎない印象。

 高音域は粒立ちがよく聞こえるがキンキンしない。SE846のブライトノズルで聴いても耳に刺さる感じはまったくない。結構な高音域までしっかり出し尽くす感じはM6 Ver.21より優れている。中音域はあくまで自然な量感で、その解像度の高さからM6 Ver.21よりもくっきりと聞き分けられるクリアなサウンド。低音域はぐっと迫力のある強調のされ方ではないものの、その曲が意図する本来の量感で再生されていると感じる自然さが良かった。音の厚みはM6 Ver.21よりも増している。この各音域の自然なバランスこそ、当機をオールラウンダーと評した理由である。音の傾向はAKMチップらしいクリアでややウォームよりのチューニングになっており、ESSチップ採用のM6 Ver.21がやや寒色系だったことからDACチップの変更はやはり音の傾向にも影響した。

 音場は広くなっており、定位もしっかり聞き分けられる。広大な空間を体感できるほどではないが、M6 Ver.21と比較すると明確に進化を感じられた。日常的なリスニングにはちょうどいいかもしれない。

 解像度は高く、かつ分析的な聞き疲れする音ではなく長時間のリスニングでもストレスがなかった。イヤホン・ヘッドホンにも依存するが、特にBAドライバ機のイヤホンなどでは各種楽器も明確に聞き分けでき、音が絡まったりすることがなく感じることができるだろう。

 全体として、サウンドのクオリティの高さには満足できた。DACチップについてはAKMの4枚積みはどんな音がするのだろう?と気になっていたが、思いの外自然な感じで聞きやすかった。(チップを4基載せた理由は信号を左右・正負でぴったり分割して処理して相互干渉を防ぐためらしい)

 

 新機能「プライムモード」

 

 これはM6 Ultraだけの機能ではないのだが、ファームウェアアップデートでM6シリーズにはすべて、新機能「プライムモード」が実装される。

Android搭載機は、裏で走る各種アプリやOSの処理によって音楽再生以外の部分にもマシンパワーが割かれてしまうため、プライムモードに切り替えることによってマシンパワーのすべてを使って音源再生をすることができる、という機能だ。

使ってみたところ、ものすごく変化があるわけではなかったが、音場の広さが広がったように感じ、高音の抜けも良くなったように思う。

プライムモード時にはshanling musicアプリのみの仕様となり、サードパーティ製再生アプリは使用できない。

僕は普段、neutron music playerを使っているが、これにはアップサンプリング機能があり、shanling musicアプリより各音域の解像度がより高く感じる。

ただ、shanling musicアプリはファームウェアアップデートでちょくちょく改良されているので今後に期待している。

M6シリーズを使用している人はぜひ一度プライムモードを試してほしい。

 

 総評

 さて、使用して感じたことについてはだいたいぜんぶ書ききったと思う。個人的には、機能面・音質面ともにエントリーモデルからのステップアップとしては非常に満足の行く製品だと言えるものだった。(次はハイエンドに片足突っ込んだやつになるのかヤバ)

しかしながら、この「ミドルクラス」の価格帯、10~20万くらいのDAPが最近かなりの数出ており、正直M6 Ultraを選ぶものもかなり悩んだ。各製品特性が異なり、単純に優劣をつけがたい。ミドル機として、これから激しい競争に身を投じることになるM6 Ultraだが、長く売れる製品となってほしいものである。

 比較対象のM6 Ver.21とはそもそも音の特性も違うので意外と優劣つけがたいというか、音質以外の点では概ね勝っているものの、音質で圧倒的にUltraが優れているという感じはしなかった。10万円以下という点からみても、やはりM6 Ver.21は非常に優れたDAPだと思う。

 おまけ(使用機材・レビュー用鑑賞楽曲紹介・レンタルサービス紹介)

 

 さて、レビューに関しては以上で終わりだが、おまけとして、当レビューの作成に当たり参考となる情報として、使用機材とレビュー用に鑑賞した楽曲を載せておく。

自分の普段聞く曲の中でも異なる色のサウンドに振り分けて聴いたつもりだが、もちろん好みの違いで選ぶDAPも変わるだろう。可能であればぜひ自分の好きな曲で試聴すべきだと思う。イヤホンも特性にかなりの違いがあるので、その点はご了承頂きたい。

 

 <使用機材>

イヤホン 

SHURE SE846第1世代(ブライトノズル) + nobunaga labs 「澪標」4.4mmバランスリケーブル

・Etymotic ER4SR + nobunaga labs 「かぐら」4.4mmバランスリケーブル

・final F4100 純正ケーブル3.5mmアンバランス

・Technics EAH-AZ60 (ワイヤレス)LDAC接続を使用

ヘッドホン

・HiFiMAN Edition XS + nobunaga labs 「霧降」4.4mmバランスリケーブル

AKG K712 Pro 純正ケーブル

 

 <鑑賞楽曲(一部抜粋)>

deladap「Dirty Jazz」/ Mili「world.execute(me); 」/ 米津玄師「M八七」 / Sui Uzi 「Star System」/ Caravan Palace 「Black Betty」/ ずっと真夜中でいいのに。「ミラーチューン」/ 長瀬有花「異世界うぇあ」/ 花譜「夜が降り止む前に」/ サカナクションアイデンティティ」/ Diggy-MO'「ONE VOW」/ Annella「Bass Me Baby」/ Snail'sHouse 「Kirara」/ やくしまるえつこ「放課後ディストラクション」/ Shpongle「Divine Moments of Truth」/ 筋肉少女帯「釈迦(4半世紀)」/ 宇多田ヒカル「Keep Tryin'」

/ 倉橋ヨエコ「損と嘘」/ オーラルヴァンパイア「LET IT DIE~ノサル~」/ the pillows「サードアイ」/ DUSTCELL 「Void」/ 人間椅子「無情のスキャット」/ 高垣楓「こいかぜ」

 

 <レンタルサービス紹介>

 shanlingの日本販売代理店のMUSINが、機材のレンタルサービス「MUSINレンタルサービス」を提供している。

M6 Ultraであれば3000円で1週間レンタルでき、じっくりと自分の環境で視聴できる。試聴可能店舗が近場にない場合はおすすめのサービスだ。レンタル後、MUSINのダイレクトショップで買えばレンタル料の半額が割引されるので、1500円で試聴できることになる。地方のオーディオガジェット好きにとってはありがたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DAPに関する雑記:shanling M6 Ver.21レビュー・ファームウェアに関して およびM6 Ultraの発売について

shanling M6 Ver.21のレビュー

2022年の2月、それまでipad miniおよびiphoneをポータブルアンプに接続して音楽を聞いていたが、以前より気になっていたDAP(ポータブルオーディオプレーヤー)を購入することにした。

 

検討するに当たり重視した点は以下の通り。

・予算は5~6万円台

・サブスクアプリ等使用するのでandroid

・androoidのSRC回避の改造が明記されている

 

 上記の条件をすべて満たしているDAPの中から、各種サイトのスペック情報とレビューを参考にして、shanlingのM6 Ver.21の購入を決めた。

 他の製品と比較して優れていると判断した点を述べていく。

 

 イヤホンジャックが3.5mmシングルエンド出力に加えて、バランス出力端子が2.5mmと4.4mmの2種類搭載されており汎用性が高い。

 ゲインレベルが3段階あり、ハイモードでは570mwの大出力。

 DACチップはES9038Q2Mをデュアル搭載のため音質は期待できる。

 SRC回避に関して。androidOSは、音楽情報再生時にSRC(サンプリングレートコンバーター)を経由してダウンサンプリングされてしまう。ハイレゾクオリティの音源を再生しても、ダウンサンプリングされてしまい音質が劣化する。そのため、多くのDAPではOSに改造を施し、SRCを経由せずに音源再生をするシステムを構築している。この仕組は画一ではなく、メーカーが各社独自に改造している。ただし、SRC回避に関してはメーカーのスペック情報に記載されているものとされていないものがあり、おそらく記載されていなくても何らかの処置はされているかもしれないが明記している方が安心できるので検討の際の条件とした。

 M6はAGLO(Android Global Lossless Output)システムを備え、SRCを回避している。このAGLOシステム、詳細について調べたが名称しかわからなかった。まあ、企業秘密か。

 

以上の製品情報から、同価格帯のDAPの中からM6を選択した。

 

 さて、実際に使用したレビューに関してだが、まず肝心の音質については僕がDAP初心者なのもあるかもしれないが非常に満足のいくものであった。

 イヤホンは主にSE846、ER4SRを4.4mmバランスリケーブルで使用している。

 高音域はキンキンしない程度によく出ており、中音域のボーカルも変に強調されず自然なバランスで聞こえる。低音域については、あまり主張しすぎない感じで低音好きなひとにはすこし物足りなく感じる可能性があるが、これは僕が使用しているイヤホンの性能も関係しているかもしれない。音の解像度は非常に高く、各音をよく聞き分けられる。音の感じはウォームというより寒色系に感じた。

 エレクトロスイングやエレクトロニカなどを好んで聴くため、かなり好みに合致したサウンドとなった。

 次に各種アプリの使用感だが、DAPは全体的にマシンパワーがスマホに比べて弱いため、ややもっさりした動きになることがある。これは購入前から予想していたため、許容できるレベルだと感じた。ダウンロード音源の再生ではneutron music playerを使用し、サブスクはapple musicを使用している。amazon musicのアプリは動作が非常に不安定だったが、幸いapple music派だったので問題なかった。

 出力が非常に優秀で、イヤホンだけでなくヘッドホンでも余裕で鳴らせて良かった。

 

 総評すると、このDAPは非常に優れた製品だと思う。購入後音楽鑑賞が更に快適になった。

 

 さて、上記の通りかなり気に入ったDAPであるM6 Ver.21だが、2022年8月現在、ある問題が起こり困っている。僕と同じ使用条件の人には、注意して次の項目をご一読いただきたい。

 

shanling M6 Ver.21のファームウェア(V3.61)に関する不具合(?)について

 

 先日、ファームウェアアップデートをしたのだが、アップデート後から以下の2点の不具合が頻繁に起こるようになった。

 

apple music使用時、2~30分に1回位の頻度で音飛びする

apple music使用時、1時間に1回位の頻度で曲の途中で再生が途切れ、次の曲にスキップされる。

 

 上記の2点ともapple musicに関する問題なのだが、これが結構ストレスで、落ち着いて音楽を聞いていられない感じになってしまった。

ダウンロード音源の再生に使用しているneutron music playerでは今のところ不具合は起こっていない。

ネットで調べたところ、同じ現象が起こっている人のレビューが発見できたので、おそらく今回のファームウェア(V3.61)により起こっているのではないかと思ったのだった。本体を初期化してみたが、改善されなかった。

 ちなみに、サードパーティ製アプリの動作保証は当然対象外なので、今後修正されるかはわからない。そのため、apple musicユーザーの人がM6の購入を検討していたら、次回アップデートが来た際に当ブログで検証するので購入は控えたほうがいいかもしれない。

 

(日本未発売)shanling M6 Ultraについて

 

 shanling M6シリーズはこれまでにM6、M6 Ver.21、上位版のM6 Pro、M6 Pro Ver21の4機種が発売されている。

 今月、shanlingは新製品M6 Ultraの発売を発表した。

 

 ネット上で製品情報をチェックしたが、今のところかなり良さそうなので購入を予定している。

 最も注目の点は搭載DACチップが旭化成チップAK4493SEQのクアッド構成になっていることだと思う。M6シリーズは、先の旭化成工場火災により従来のAKMチップからESS社製チップに変更を余儀なくされ、マイナーチェンジ版としてVer.21を販売しているが、この度再び旭化成チップに戻ったことになる。

 どちらのDACチップが優れているかは、音の好みもあるため一概には言えないのだが、僕はDAP購入前に使用していたポータブルアンプがAKMチップ機であり、その音作りが非常に気に入っていたため、M6 Ultraにはかなりの興味を持つことになった。

 先に発売されているM7はM6 Ultraの上位版の価格設定であるが、搭載DACチップはESSであるので、両者の出音の特性はかなり違ったものとなるだろう。

 また、DACチップのデュアル搭載機は多いが4枚積みの音は聞いたことがないので、どのようなものになるのか非常に興味深い。

 

 android OSもバージョンが10になり、搭載SoCはsnapdragon 665だが、この構成はなんと上位機種のM7とM9(リミテッド品)と同じである。先に発売されている両機種のスペックから、操作感はかなり快適になると思われる。そして、M7との価格差がおよそ400ドル程度であることから、お得感がすごい。

 

 このようにかなり注目の新製品であるM6 Ultraであるが、すでに海外では発売されているのだが、日本での発売についてその時期や価格がまだ発表されていないようだ(僕が調べた限りでは)。

 毎日ソワソワしながら発表を待っている。お金と音源を貯めて備えよう。